双極性障害とは
そううつ病とも呼ばれています。
読んで字のごとく、うつ状態とそう状態を繰り返してしまう疾患です。
双極性障害では、うつ状態とは別に、そう状態となります。色々な内容の話をする、動き回る、元気が溢れる、誇大妄想などなど。
程度は様々で、仕事のパフォーマンスが上がる程度の方もいれば、多額の借金をして外国の鉱山を買ってしまう方もいらっしゃいます。
これまでに診察した患者さんの中には、診察室に入った瞬間に、金の入れ歯を外して「先生!これあげる!」という方や、病棟でお金をばら撒く患者さんもいました。
高級ホテルのスイートルームに何日も宿泊する方、突然ファーストクラスで海外旅行へ行く方など。
ごく簡単に分類しますと、そう症状が「派手」な場合を双極性障害Ⅰ型、他から見てもそんなに派手ではない場合を双極性障害Ⅱ型と分類します。
双極性障害の難しいところは、そう状態になると、治療の必要性を自覚してもらいにくくなることです。「こんなに調子がいいのだから薬なんて必要ない」と。
さらに、双極性障害では自殺率が高くなります。そう状態からうつ状態へ移行した後、そう状態での自分の言動を省みて、取り返しのつかないことをしたと思うためと考えられます。
うつ状態、そう状態、特に症状がない間欠期があります。
これらの状態の移行が、どれくらいの頻度で起こるか、また持続する期間も様々です。 いずれにおいても、今後の経過について自分ではコントロールも予測も困難となります。
そのために、継続した治療が重要となります。
双極性障害の治療
気分を安定させる薬剤が中心となります。患者さん本人が、病気のせいで社会生活に著しい困難を生じていれば、入院治療が必要になる場合もあります。
治療は、休息、診察、薬物です。
そう状態では、寝なくても食べなくても平気で元気いっぱい。でも心身は疲れています。そのため症状に応じて休息を必要とします。
うつ状態でも、エネルギーは枯渇していますので、休息は必要不可欠です。
診察では、いわゆる「やらかしてしまったこと」などを真摯に共有して行きます。ここであまりに掘り下げて話をするのはマイナスだと考えています。なぜなら患者さん自身が一番そう感じているからです。うつ状態では、うつ病の場合とほぼ同様な診察となります。
薬物治療は、多くの患者さんで必要となります。
そう状態を改善する薬剤はあります。
思考を押さえつけるだけのような薬剤は、最近はほぼ使用されません。
うつ状態での治療は、難しいところです。うつ病のように、「持ち上げる」タイプの薬剤を使うと、薬剤がそう状態への足掛かりとなってしまう可能性があります。
ただ、正直に申し上げますと、目の前の患者さんがうつ状態で苦しんでいるときに、やむを得ず抗うつ薬を使うことはあります。これは推奨される治療法ではありませんが…
今では、4週間に1度の注射による治療があります。
私の経験では、この治療法はかなり優れているという印象があります。経口薬に比べて、より良い状態を維持できると考えています。
これは、再発予防効果に優れていること、飲み忘れの心配を軽減できるためなどによると考えています。しかし注射がすべての患者さんに有効とは言えません。
その他の薬剤選択についても、じっくりと患者さんと相談しながら決めていきます。