統合失調症の症状
- 幻覚
- 妄想
- 興奮
- 身なりや食事に関心がなくなる など
統合失調症について
統合失調症は、以前は精神分裂病とよばれていました。 自分と自分以外の世界の境界が曖昧になるという意味では、どちらも間違っていない名前だと思います。
精神分裂=自分と自分以外の世界、その両方にいるようなイメージです。
統合失調=不協和音だけで構成された、居心地のよくない場所にいるようなイメージです。
例えば…
自分の体の中にマイクロチップが埋め込まれている。そのマイクロチップには、世界の食料危機を解決する秘密の情報が入っている。
これは、私の想像になります。実際にはマイクロチップは埋め込まれていませんし、私には世界の食料事情を解決するすべはありません。
もうちょっと想像を膨らませてみます。
そのマイクロチップの情報があれば、思うように世界を動かせるから、マイクロチップを狙ってくる人達がいるはずだ。だから、四六時中誰かが自分を見張っている、自分の行動をすべて監視されている。特殊な機械を使って、自分の脳に命令を送ってくる。
まだまだ私の想像です。
テレビのニュースで、世界の食糧事情が報道されると、やっぱりこのマイクロチップはすごい。自分は特別な使命を持っている。それを狙って悪い奴らが寄ってくる。でもこの秘密は誰にも話せない。誰もが自分を騙そうとしているに違いないから。でも秘密の命令が人の声で聞こえてくる。
想像が妄想へと変容して、現実世界との境界が心地よくない形になって行きます。
CTやMRIで検査を受けても、「マイクロチップなんてありません」と言われます。
病気が進行してくると、「そんなはずはない。このマイクロチップは今の技術では見つけられない、すごいモノなのだ」と考えます。
もちろんそれが病気のせいだとは考えることができなくなっています。
現実と現実ではない世界の境界が曖昧になり、自分にとって心地よくない響きに支配されている状態になっています。
これが統合失調症の概念です。
統合失調症の治療
主にお薬によって治療を開始します。脳内の神経の連絡をおこなう物質が上手く作用していなかったり、過剰に分泌されているために症状が現れているので、それらをお薬で調整していきます。
興奮が強い場合や、自分を傷つけてしまう患者さんの治療は入院が必要となります。
ひと昔前は、寝ているか起きているかわからない状態にする治療が主体でした。
妄想が活発でも、ドロンドロンなら何か行動することもないだろうという考えです。 さらに昔のヨーロッパなどでは、患者さんを一時的に水に沈めるなど、今では考えられないような治療が当たり前に行われていた時期もあります。
でも、最近は妄想や幻聴そのものを軽減できる薬物がたくさんあります。1か月に一度の注射による治療や、今では3か月に一度の注射剤もあります。毎日の内服は、飲み忘れの心配があり、本人のみならず、ご家族や支援者にとっても負担が大きいため、注射剤は良い治療法だと私は考えています。
39度の熱があっても、それは「マイクロチップが作動しているから」。
足首を捻挫しいていても、「それは組織が嫌がらせをしている」。
病気であるという自覚を持てない状態から、お薬と診察によって、「病気のせい」という認識をしてもらうように治療していきます。
統合失調症のような症状は脳の炎症や、内臓の疾患からもみられることがあります。それらを除外するために、脳外科や内科を受診していただくこともあります。
統合失調症は、お薬の治療をいつまで続けるのかも、難しい疾患です。目の前の患者さんが、今後どのような経過をたどるのか、すぐにはわからないからです。
そのため、患者さんと病気以外のこともたくさん共有して、長期的な治療について一緒に考えてゆくことが重要となります。